三階建完全分離型二世帯住宅②
数十年前は玄関は道路面に設けるもの、方位によって位置を決めたりと一定の固定観念があったような気がしますが、最近ではこれだけ多種多様な価値観が存在する世の中になると、玄関の位置付けは以前より縛りは無くなっているのかな?と感じています。しかし自由度が高くなる分、配置は難しくなります。今回の計画では完全分離型二世帯住宅の為に2つの玄関を設ける必要がありますが、一つ目の玄関の位置は割と早い段階から決まっていました。道路面に向けてビルトインガレージ2台分のスペースが必要な為に、道路面に玄関を向けるスペースが無い事と高度斜線により建物と敷地に一定の距離が必要なので北側に通路をつくって玄関を配置しました。以前は3階建て以上の建物は玄関から避難できる通路(敷地内通路)の幅員は1.5M以上必要で、敷地面積が小さい住宅の設計の際には苦労しましたが、2020年の法改正により階数3以下、延面積200㎡未満の建物は90㎝以上となり今では現実的な寸法の設計ができるようになりました。玄関を奥まった場所に設ける場合、玄関までのアプローチの仕上げや、ライティングを工夫する事により楽しい道のりになります。
もう一つの玄関は最終的にガレージから入る計画となりました。この玄関は2つの動線があり、もう一つの玄関と共有する敷地内通路から分岐させたガレージ経由と、直接ガレージからの動線です。ガレージから玄関に入れる場合、車を降りて雨に濡れず家に入れるという大きいメリットがあります。もう一つの敷地内通路からの動線を作った経緯は先ほどご紹介した「楽しい道のり」です。玄関に入るまでの道のりを少しでも豊かにできればと思いました。この動線を作る為に何かを減らした訳では無く既にあるものを使う事により一石二鳥的な効果を狙いましたが、このように今回の玄関の位置は、かなり複合的な要素で成り立っています。
※外観スタディ中の断面図
もう一つの悩みであった外観デザインは形状・色・素材などで構成されますが、今回まとめる事が非常に難しかったのが「形状」です。
高度斜線による屋根のセットバックをいかにデザインに反映させるか、太陽光パネルをできるだけ搭載させる為には南側の屋根はどのような形が良いのか、その二つをクリアしたとしてもその形は良い形状になるのか、繰り返しシミュレーションしていきました。
・・・つづく