一邸一邸の設計物語~完成見学会にて
お施主様のご厚意により3月の第1週と第2週にかけて完成見学会を開催させていただきました。見学会の開催にご協力いただきましたお施主様、ご来場いただきました皆様、誠にありがとうございました。1週目は厳しい立地条件を最大限に活用した市川市内の「完全自由設計 木造三階建て事務所併用完全分離型二世帯住宅」、2週目は流山市内にて自然素材をふんだんに使った落ち着いた佇まいの住宅「木々の香りに包まれて暮らす高耐震・高断熱の家」の見学会でした。2邸ともお施主様のこだわりが目一杯詰まった住宅です。完成見学会は、たくさんのお客様にお施主様とつくりあげた素敵な家を見ていただく貴重な機会には間違い無いのですが、私にとってはお施主様より一足早く朝から夜まで完成した家で過ごす事ができる贅沢な機会でもあります。その贅沢な時間には初めてお客様とお会いした日から家づくりの過程を振り返る事も多く、今回も同様でした。立地条件・家族構成が全く違う2邸を少しだけご紹介させていただきます。
「完全自由設計 木造三階建て事務所併用完全分離型二世帯住宅」
前面道路に都市計画道路の計画があり建物後退ラインが設定されており、お施主様がご要望されるボリュームが中々出ない状況でした。将来道路が整備される際に部分的に取り壊しができるよう、2階建て部分と3階建て部分をエキスパンションジョイントで繋いでボリュームを確保しようと考えましたが、性能・納まり・コストパフォーマンス等を考え残念ながら不採用としました。平面上で考えた場合に建てられる面積は限られる為に出来るだけ上階にボリュームが出るように再考しましたが、道路幅員が狭く高度斜線も発生する地域の為、高さの制限が非常に厳しくこちらも難航…
しかし、天空率の適用、地盤の高さや天井の高さの調整など、あらゆる手段を講じて出来るだけのスペースを3階に設けて所要室を確保すると共に、太陽光パネルを6.85kw搭載できるほどの屋根をつくる事ができました。又、厳しい条件の中でもデザイン性を追求し、3階のはね出しをアクセントとし、サッシの並びや見上げによる目線の切れを使って外観を整えています。事務所・親世帯・子世帯の3カ所の玄関、屋外階段を含めた3つの階段は複雑な動線となりながらも無駄なスペースを排除した計画となっています。
厳しい条件の中でもデザイン性を追求した外観
「木々の香りに包まれて暮らす高耐震・高断熱の家」
100坪を超える南西角地のお建て替えでした。たくさんの選択肢がある中で、総2階の計画で直下率を高めながらも玄関には化粧柱のある大きな庇で外観に変化をもたらします。又、パッシブデザインを基本とした計画は、大きな軒を設え落ち着いた佇まいを演出します。既存の柿の木を活かしたエクステリアの計画は精密な測量無くしては成り立たず、建築計画の重要な位置付けとなりました。広い車庫やアプローチをコンクリートで仕上げる場合は雨水の処理を検討する必要があり、これによる増嵩費用を回避する為にお施主様からのアイデアで透水性舗装材のオコシコンを採用しました。建物と一体となったたくさんのアイデアを盛り込んだエクステリアを、これから植えられていく様々な植栽が長い時間をかけて彩ります。
パッシブデザインの建物に調和したエクステリア
いかがでしたでしょうか?
注文住宅には一邸一邸にたくさんの物語があります。
次回の見学会でも、多くの皆様とたくさんの物語を語り合えたら幸いです。